低温調理の鶏は、中心温度がすべて
低温調理で作った鶏肉は、鳥刺しではなく「加熱した鶏肉」です。安全に食べるには、肉の中心を63℃で30分以上(75℃で1分と同じくらいの加熱)保ちます。お湯の温度ではなく、肉の中心の温度で時間を数えることが大切です。
「低温調理なら、鳥刺しのようなしっとりした鶏肉を安全に食べられる?」と考える人は多いようです。東京都の資料と、神奈川県の保健福祉事務所が行った実験をもとに、温度と時間の考え方を説明します。
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低温調理と鳥刺しはどう違う?
低温調理は、60℃前後のお湯に肉を袋ごと沈め、時間をかけて火を通す方法です。高い温度で焼くより、しっとりやわらかく仕上がります。
むね肉やささみは、強い火で焼くとパサつきやすい部位です。家庭用の調理器が手ごろになり、しっとりした鶏むね肉を作る人が増えました。
鳥刺しは、生食用として加工された鶏肉を生のまま食べる料理です。表面をあぶることはあっても、中まで火は通しません。
| 鳥刺し | 低温調理の鶏肉 | |
|---|---|---|
| 中の状態 | 生 | 中心まで加熱する |
| 使う肉 | 生食用として加工された鶏肉 | 加熱用の鶏肉でもよい |
| 菌への考え方 | 加工の衛生管理で減らす | 中心の温度と時間で死なせる |
つまり、「生に近い鳥刺し」を作る方法ではありません。中心まで決められた温度で加熱して、はじめて安全に食べられる料理です。
スーパーの加熱用の鶏肉を、表面だけあぶったり湯通ししたりして鳥刺し風にするのは危険です。家で鳥刺しを作るときの考え方は、次の記事にまとめています。

鳥刺しを低温調理するなら中心63℃で30分以上
東京都は、鶏肉を調理する飲食店に向けた資料を出しています。肉の中心を「75℃で1分間と同等以上(63℃で30分間以上など)」加熱するよう求めています。
| 中心の温度 | 保つ時間 | ポイント |
|---|---|---|
| 75℃ | 1分以上 | ふつうに焼く・煮るときの目安 |
| 63℃ | 30分以上 | 低い温度でじっくり加熱するときの目安 |
同じ資料は、低い温度では温度の管理が不安定になりやすく、菌を殺せずに食中毒を起こす可能性が高くなるとも書いています。湯引きやあぶる程度の加熱では、カンピロバクターは死なないとも明記しています。
お湯の温度と肉の中心の温度は違う
低温調理器を63℃に設定しても、肉を入れてすぐに中心が63℃になるわけではありません。肉が厚いほど、中心が温まるまでに時間がかかります。
「63℃で30分」は、中心が63℃に届いてから30分という意味です。お湯に入れてから30分ではありません。
出典:東京都「HACCP取組支援資料(カンピロバクター対策)鶏肉を調理提供する飲食店の皆様へ」
鳥刺し風の低温調理は安全?県の実験
神奈川県の保健福祉事務所と衛生研究所が、ネットに載っている条件で鶏レバーを加熱し、菌が残るかを調べました。飲食店で「レバー刺し」として低い温度で加熱した品が出され、加熱の条件を十分に確かめていない例があったためです。
| 加熱の条件 | 結果 | 分かったこと |
|---|---|---|
| お湯63℃に入れて30分 | 2検体のうち1検体でカンピロバクター陽性 | 同じ条件でも結果が分かれた |
| 中心が63℃に届くまで | 届いた時点でカンピロバクター陰性 | 中心の温度で管理すれば菌は減る |
| お湯58℃ | 中心が58℃に届くまで40〜94分 | 届くまでの時間に大きなばらつき |
研究チームは、レバーの大きさや厚さ、袋の位置などで、中心が設定温度に届くまでの時間が大きく変わると報告しています。そのうえで、見た目や触った感じだけで、加熱が十分かを判断するのは適切ではないとまとめています。
実験はレバーで行われ、検体の数も少ない調査です。それでも、「レシピの温度と時間どおりにすれば安全」とは限らないことが分かります。鶏レバーの生食の危険は、次の記事でくわしく紹介しています。

出典:神奈川県「鶏レバーの低温調理について」(平塚保健福祉事務所ほか)
鳥刺し風の低温調理を家で作るときの注意
家で作るなら、次の点を守ってください。
- 中心温度計を使う:いちばん厚い部分に刺して、中心の温度を測る
- 厚さをそろえる:厚い肉は中まで温まりにくい。切って厚さをそろえる
- 届いてから時間を数える:中心が63℃になってから30分以上保つ
- レシピを変えない:肉の量や大きさを変えたら、温度と時間を確かめ直す
- 見た目で判断しない:色が変わっていても、中心の温度が足りないことがある
- できたらすぐ冷やす:常温に置かず、冷蔵庫で保存して早めに食べる
生の鶏肉を切った包丁やまな板は、ほかの食材と分けて使います。火を通して食べる鶏肉の調理例は、次の記事も参考になります。

鳥刺しの食感を楽しみたいなら
正しく火を通した鶏肉も、しっとりした食感になります。ただ、中まで火が通っているので、生の鳥刺しとは別の料理です。
鳥刺しそのものを食べたいなら、生食用として加工・表示された鳥刺しを選びます。鹿児島県は、生食用の鶏肉について独自の衛生基準を設けています。それでも食中毒のリスクがゼロになるわけではなく、子どもや高齢者、体調のすぐれない人は控えてください。
生食用の鳥刺しを取り寄せる方法は、次の記事にまとめています。

鳥刺しと低温調理でよくある質問
鶏ハムも同じ考え方?
鶏ハムも、低い温度で時間をかけて火を通す料理です。中心を63℃で30分以上(または75℃で1分以上)保つという考え方は同じです。
60℃より低い温度で作ってもいい?
温度が低いほど、中心が温まるまでの時間も、必要な加熱の時間も長くなり、管理がむずかしくなります。神奈川県の実験では、58℃のお湯で中心が58℃に届くまで40〜94分かかりました。家では63℃以上で、中心の温度を測って作るほうが確実です。
低温調理なら子どもに出してもいい?
中心まで決められた温度と時間で加熱できていれば、加熱した鶏肉です。温度を測っていないものや、中が赤いものは出さないでください。
お店の「低温レバー刺し」は?
神奈川県の実験は、こうした料理の加熱の条件が十分に確かめられていない例があったことから行われました。生に近い見た目のものは、中まで加熱されているか店に確かめると安心です。
鳥刺しと低温調理は別の料理として考える
低温調理の鶏肉は、生の鳥刺しではなく加熱した鶏肉です。肉の中心を63℃で30分以上保つのが目安です。
お湯の温度ではなく、中心の温度が届いてから時間を数えます。見た目では判断できません。
鳥刺しを食べたいときは、生食用として売られているものを選んでください。
鳥刺しで食中毒が起きる仕組みは、菌の性質から説明したこちらの記事が分かりやすいです。
