鳥刺しの食中毒はなぜ起こる?原因・症状・防ぎ方をまとめて解説
トリサシサツマ編集部

鳥刺しの食中毒、主な原因はカンピロバクター

鳥刺しの食中毒は、鶏肉に付いたカンピロバクターという細菌が主な原因です。食べて1〜7日後に下痢や腹痛、発熱が出て、多くは1週間ほどで治ります。新鮮さでは防げず、確実に防ぐ方法は中心部まで加熱することです。

「なぜ生の鶏肉で食中毒になるの?」「どんな症状が出る?」「防ぐ方法はある?」。こうした疑問に、厚生労働省などの公的な資料をもとに答えます。原因、症状、発生状況、対策の順にまとめました。

鳥刺しで食中毒が起こるまで
  1. 鶏の腸に菌がいる健康な鶏でも持っている場合がある
  2. 処理のときに肉へ付く今の技術では100%は取り除けない
  3. 生や半生で食べる数百個ほどの少ない菌でも感染する
  4. 1〜7日後に症状が出る下痢 腹痛 発熱など

厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」をもとに作成

鳥刺しの食中毒の原因はカンピロバクター

カンピロバクターは、鶏や牛など多くの動物が腸の中に持っている細菌です。厚生労働省は、数百個ほどの少ない菌でも人に感染すると説明しています。乾燥に弱く、通常の加熱調理で死滅する性質もあります。

鳥刺しは、表面をあぶってあっても中は生のまま食べる料理です。肉に菌が付いていた場合、加熱で減らす工程がないまま口に入ります。生肉に触れた箸や皿からサラダなどへ菌が移る、二次汚染でも感染します。

鶏肉がどのくらい汚染されているかは、調査によって幅があります。厚生労働省がまとめた研究結果は次のとおりです。

調べた対象菌が見つかった割合調査
市販の鶏肉20〜40%厚生労働科学研究 平成18年度
市販の鶏もも肉 鶏むね肉42% 40%厚生労働科学研究 平成26年度
農場で陽性だった鶏群の鶏肉91%農林水産省 平成22年度
農場で陰性だった鶏群の鶏肉27%農林水産省 平成22年度

これらは加熱して食べる一般の鶏肉の数字です。生食用として加工された肉の数字ではありません。ただ、鶏肉にはもともと菌が付いている場合が多いことがわかります。

新鮮な鶏肉でも食中毒が起こる理由

厚生労働省は「新鮮だから安全」ではないと明記しています。菌は鶏が生きているときから腸の中にいて、処理の段階で肉に付くためです。今の食鳥処理の技術では、100%取り除くことは難しいとされています。

食品安全委員会も同じ説明をしています。カンピロバクターは冷蔵で流通している間は増えないと考えられています。時間がたつほど菌が増える、という一般的なイメージが当てはまりません。朝びきの肉でも、リスクは下がらないということです。

出典:厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」
食品安全委員会「カンピロバクターとの長い闘い」

「新鮮でも起こる」を知っていた人は55.6%

全国の487人へのアンケートでは、「新鮮な鶏肉でも、生で食べると食中毒のおそれがある」ことを知っていた人は55.6%でした(トリサシサツマ調べ、2026年10月、有効回答487人)。

グラフ:鶏の生食について知っていたこと。新鮮でも食中毒のおそれがある55.6%、控えるよう呼びかけられている30.4%、独自の衛生基準がある15.0%、どれも知らなかった35.5%(トリサシサツマ調べ、2026年10月)

鳥刺しを食べたことがある人でも、36.7%は知りませんでした。食べたことがある人が、リスクを知っているとは限りません。

アンケートのくわしい結果は、次の記事で紹介しています。

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鳥刺しによる食中毒の症状と潜伏期間

鳥刺しを食べて起こる症状は、下痢、腹痛、発熱、吐き気、嘔吐、頭痛、だるさなどです。カンピロバクター腸炎とも呼ばれます。食べてから症状が出るまでは一般に1〜7日間で、ほかの食中毒より長めです。数日前の食事が原因になるため、気づきにくい点に注意してください。

カンピロバクターの潜伏期間は一般に1〜7日。症状があれば食事と発症の経過を伝えて医療機関へ相談。

鳥刺しが原因の場合も、多くの人は1週間ほどで治ります。ただし、乳幼児や高齢者、抵抗力の弱い人は重症化する危険があるとされています。症状が出たときの対応と受診の目安は、次の記事で紹介しています。

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まれに、感染の数週間後にギラン・バレー症候群を発症する場合があります。手足の麻痺や呼吸困難を起こす病気です。下痢が治った後に手足のしびれや脱力が出たら、早めに受診してください。

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出典:厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」

鶏肉の生食による食中毒はどのくらい起きているか

カンピロバクターによるものは、国内の細菌性食中毒の中で発生件数が最も多くなっています。厚生労働省の集計では、近年は年間200件前後で推移しています。

年事件数患者数
令和3年154件764人
令和4年185件822人
令和5年211件2,089人
令和6年208件1,199人
令和7年220件1,226人

この数字は、鶏刺しだけのものではありません。原因として、鶏レバーやささみの刺身、鶏のタタキ、加熱不足の料理などが挙げられています。水が原因の事例も含まれ、令和5年は湧水による大規模な発生がありました。

大きな事例もあります。平成28年には、屋外のイベントで加熱不十分な鶏肉の寿司が提供され、500人を超える患者が出ました。主催側は「新鮮だからこそできる」と宣伝していたと報告されています。

また、統計に載るのは、保健所に届け出があって食中毒と確定した分だけです。食品安全委員会は、受診しない人も多く、実際の患者はもっと多い可能性があるとしています。鳥刺しだけの件数は、公表されている統計からはわかりません。

「何%の確率で当たるのか」の考え方と、鹿児島県の発生状況や衛生基準は、次の記事で詳しく扱っています。

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出典:厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」
食品安全委員会「カンピロバクターとの長い闘い」

鳥刺しの食中毒を防ぐ方法

対策は、確実に防げるものと、リスクを下げるものに分かれます。鳥刺しを生で食べる限り、リスクをゼロにする方法はありません。

対策の2つの段階

確実に防ぐ

  • 中心部を75℃以上で1分間以上加熱する
  • 肉に触れた手と器具を洗う
  • 肉とほかの食品で器具を分ける

リスクを下げる

  • 生食用の表示がある商品を選ぶ
  • 表示どおりに保存する
  • 体調の悪い日は食べない

子ども、高齢者、抵抗力の弱い人は生食を控える

厚生労働省は、未加熱や加熱不十分な鶏肉料理を避けることが最も効果的だとしています。食品安全委員会の評価でも、生で食べる割合を80%減らすと、食中毒のリスクは69.6%下がると推定されました。

飲食店で鶏刺しやタタキがメニューにあっても、加熱用の鶏肉を使っている場合があります。生食用の肉を仕入れているかは、店に確認できます。鹿児島県は、生食用の鶏肉について加工や表示の衛生基準を設けています。

加熱して食べる方法は、次の記事にまとめています。

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出典:厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」
食品安全委員会「カンピロバクターとの長い闘い」
鹿児島県「生食用食鳥肉等の安全確保について」生食用食鳥肉の衛生基準

国は、生食用の鶏肉のガイドラインを初めて作る方針だと報じられています。くわしくは次の記事をご覧ください。

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鳥刺しの食中毒でよくある質問

表面をあぶれば防げる?

加熱用の鶏肉の表面を焼いても、中が生のままなら防げません。厚生労働省は、原因食品として鶏肉のタタキや鶏わさなどの半生の料理を挙げています。鳥刺しとして食べる肉は、生食用として加工されたものを選んでください。

レバーや砂肝の刺身は?

内臓は、肉よりも注意が必要です。厚生労働省が紹介する調査では、市販の鶏レバーの66.1%、砂肝の66.7%から菌が見つかっています。鹿児島県の衛生基準も、内臓を生食用の対象から外しています。

一緒に食べた人が平気なら食中毒ではない?

そうとは限りません。症状が出るまで1〜7日かかるため、ほかの人はこれから発症する可能性があります。菌の付き方は肉の部分によっても違います。体調が悪いときは、ほかの人の様子にかかわらず医療機関に相談してください。

原因となるカンピロバクターの性質と、鹿児島県の衛生基準のねらいは、次の記事でくわしく扱っています。

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鳥刺しは原因と症状を知って食べ方を選ぶ

鳥刺しの食中毒の主な原因は、鶏肉に付いたカンピロバクターです。新鮮でも菌は付いている場合があり、少ない数でも感染します。

症状は食べて1〜7日後に出て、多くは1週間ほどで治ります。確実に防ぐ方法は加熱です。生で食べるなら、生食用の商品を選び、体調や年齢に合わせて判断してください。

この記事は公的機関の情報をもとにした一般的な案内です。症状があるときは、医療機関に相談してください。