鳥刺しといえば、鹿児島と宮崎
鳥刺しが有名な県は、南九州の鹿児島県と宮崎県です。農林水産省は「鶏刺し」を鹿児島県の郷土料理として紹介しており、鹿児島県と宮崎県はブロイラーの飼養羽数が全国1位・2位で、どちらも生食用の鶏肉について県独自の衛生基準・対策を定めています。
「鳥刺しが有名な県はどこ?」「なぜ九州で食べられているの?」と気になった人に向けて、鹿児島・宮崎の食文化と、鳥刺しを取り巻く背景を公的な資料と統計から紹介します。なお、鳥刺しの発祥の地や始まりの時期は、はっきりと特定されているわけではありません。
出典:農林水産省「うちの郷土料理」、農林水産省「畜産統計」、鹿児島県・宮崎県の資料をもとに作成
鳥刺しは鹿児島の郷土料理として紹介されている
農林水産省の「うちの郷土料理」は、「鶏刺し」を鹿児島県の郷土料理として掲載しています。同ページは、江戸時代から薩摩の武士たちが闘鶏を盛んに行っていた記録があることや、闘鶏が禁止された後も各家庭で鶏が飼われ、来客や祝いの席のために鶏をしめて料理していたことを紹介しています。
そのうえで、鹿児島では古くから鶏肉を使った料理が身近で、その流れの中で鶏刺しが根づいたと考えられるとしています。「ここが発祥」と断定するのではなく、鶏料理が暮らしに根づいた土地で親しまれてきた料理として説明されている点がポイントです。

鹿児島の鳥刺しに使われる地鶏
同じページは、鹿児島の鶏の品種にもふれています。薩摩地鶏は、秋田県の比内地鶏、愛知県の名古屋コーチンとともに日本三大地鶏のひとつに数えられています。
- 薩摩地鶏:江戸時代に闘鶏用に飼われた薩摩鶏が原種。肉の弾力、甘み、色合いがよいとされる
- さつま若しゃも:薩摩鶏を原種にしたブランド鶏
- 黒さつま鶏:同じく薩摩鶏を原種にしたブランド鶏
鹿児島では鳥刺しのほかにも、さつま汁や鶏飯、やきとりなど、さまざまな鶏料理が親しまれています。
宮崎も鶏料理が豊富で、鳥刺しの衛生対策を定めている
宮崎県も、鳥刺しが有名な県のひとつで、鶏料理がさかんです。農林水産省の「うちの郷土料理」には、宮崎県の料理として、かっぽ鶏、地鶏の味噌ころばかし、とりめし、チキン南蛮などが掲載されています。
鳥刺しについては、宮崎県が2007年(平成19年)に「生食用食鳥肉の衛生対策」を定め、生食用の鶏肉を加工する認定小規模食鳥処理場に対して、この対策に基づく確認や指導を行っています。あわせて、加熱用の鶏肉には「加熱用である旨」などを表示すること、加熱用の鶏肉を生や半生で提供しないことの指導も行っています。
出典:農林水産省「うちの郷土料理・宮崎県」
宮崎県「令和7年度食品衛生監視指導計画実施結果の公表」(令和7年度宮崎県食品衛生監視指導計画)
全国アンケートでは、宮崎と鹿児島がほぼ同じ数
「鳥刺し」と聞いて最初に思い浮かべる県を、全国の487人に聞きました。宮崎県が23.0%、鹿児島県が20.7%です。差は11人で、誤差の範囲でした(トリサシサツマ調べ、2026年10月、有効回答487人)。

いちばん多かった答えは「特に思い浮かばない」の43.1%です。食べたことがある人に限ると、鹿児島県が30.3%、宮崎県が28.0%。年に数回以上食べる人では、鹿児島県が43.4%でした。
地方別や経験別のくわしい結果は、次の記事で紹介しています。

数字で見る、南九州の鶏
農林水産省の「畜産統計」(2024年2月1日現在)によると、ブロイラー(肉用の若どり)の飼養羽数は、全国1億4,485万9千羽のうち、鹿児島県が3,200万3千羽で1位、宮崎県が2,815万5千羽で2位です。
全国の飼養羽数に占める割合。出典:農林水産省「令和6年畜産統計」ブロイラー(飼養戸数・羽数)をもとに計算
鹿児島県と宮崎県を合わせると、全国のブロイラーの約4割が南九州の2県で飼われている計算です。鶏が身近な産業でもあることは、鶏料理が暮らしに根づいている背景のひとつといえます。
出典:農林水産省「令和6年畜産統計」ブロイラー(令和6年2月1日現在)飼養戸数・羽数(全国農業地域・都道府県別)(政府統計の総合窓口 e-Stat)
鳥刺しはなぜ九州で食べられている?
鳥刺しが南九州で親しまれている理由は、ひとつに特定されているわけではありません。ここまで見てきた資料からは、次のような背景が重なっていることがわかります。
- 家庭で鶏を飼い、祝いの席などで鶏料理を食べてきた食文化(鹿児島の郷土料理の記録)
- ブロイラーの飼養羽数が全国1位・2位という、鶏の産地としての性格(畜産統計)
- 生食用の鶏肉について、県が独自の衛生基準・対策を定めて指導していること(鹿児島県は2000年、宮崎県は2007年)
ただし、県の衛生基準・対策は、生で食べることに伴うリスクを下げるための取組です。食中毒のリスクがなくなることを保証するものではありません。鹿児島県は、子どもや高齢者、抵抗力の弱い人は生食を控えるよう示しています。
出典:鹿児島県「生食用食鳥肉等の安全確保について」
宮崎県「生食用食肉の取扱いについて」
鹿児島・宮崎以外で鳥刺しを食べるとき
鹿児島県や宮崎県の基準・対策は、それぞれの県が定めたものです。宮崎県は、鶏肉は国の「生食用食肉」の規格基準の対象になっておらず、生食はカンピロバクター食中毒などのリスクが高いため、十分に加熱して食べるよう呼びかけています。
通販やお取り寄せ、県外の飲食店で鳥刺しを食べるときも、生食用の表示や処理・加工した施設、保存方法を確認しましょう。

鹿児島で鳥刺しを食べられる店と買える店は、次の記事でエリア別に紹介しています。

鹿児島の郷土料理を英語でどう紹介するかは、例文つきの記事が参考になります。

鳥刺しが有名な県に関するよくある質問
鳥刺しの発祥はどこ?
発祥の地ははっきりと特定されていません。農林水産省の郷土料理ページは、鶏料理が身近だった鹿児島で、その流れの中で鶏刺しが根づいたと考えられると紹介しています。
鳥刺しが有名な県はどこ?
鹿児島県と宮崎県がよく知られています。どちらもブロイラーの飼養羽数が全国上位で、生食用の鶏肉について県独自の衛生基準・対策を定めています。
鹿児島と宮崎の鳥刺しは違う?
味付けや部位、切り方は店や商品によってさまざまです。共通しているのは、それぞれの県が生食用の鶏肉について独自の基準・対策を定め、事業者を指導している点です。

鹿児島で鳥刺しを食べられるお店は、次の一覧から探せます。
旅行の帰りに鳥刺しを買って帰りたいときは、持ち帰りの店の選び方と保冷のコツを紹介した次の記事が参考になります。

南九州の鶏文化の中で親しまれてきた鳥刺し
鳥刺しは、鹿児島県や宮崎県など南九州で親しまれている料理です。農林水産省は鶏刺しを鹿児島県の郷土料理として紹介しており、発祥の地は特定されていません。
両県はブロイラーの飼養羽数が全国1位・2位の鶏の産地で、生食用の鶏肉について県独自の衛生基準・対策も定めています。鶏料理の食文化、産地としての性格、衛生管理の取組が、鳥刺しを支える背景です。
どこで食べる場合も、生の鶏肉を食べるリスクは残ります。表示や保存方法を確認し、食べる人の年齢や体調に合わせて判断しましょう。